【イチジクの管理】イチジクの理想の挿し木

色々な農家さんの畑を視察させていただき、また、自身もイチジクの栽培をしてきた中で感じた「イチジクの理想の挿し木」について書いていきたいと思います。過去の記事と矛盾している部分もあると思いますが、何卒ご容赦ください。また、今回の記事は「挿し木のやり方」を解説しているわけではありませんのでご留意願います。

前提はいかに良い樹を育てるか

あくまで栽培方針は「イチジクにストレスをかけずに、良い樹(樹は健康的で、美味しい実をたくさんつける樹)を育てる」ことを前提に記事を書いています。

挿し木の理想の時期

結論からいうと、3月末から4月上旬です。それ以外の時期については、イチジクの挿し木の時期としてはふさわしくありません。ここでご留意いただきたいのが結論での挿し木の時期以外でも、発芽はしますし、発根もします。要は「どのような栽培方針をもって栽培しているか」という視点です。

イチジクになるべくストレスをかけず、樹勢を保って栽培したいのなら、この時期一択です。3月末から4月上旬に挿し木をすると、2日程度で発芽することも多々あります。挿し木をしてから発芽・発根までの期間が短く、穂木の消耗が少なく済みます。

穂木は将来「地際部」となり、「主幹」となる超重要な骨格を形成します。乾燥などで損傷があればそれだけ負荷がかかるのは明らかです。実付きが悪くて栽培が難しい品種で、さらに地植えであっても、挿し木した年からたくさん収穫することだって狙うことができます。

穂木を採る時期

これも3月末から4月上旬です。挿し木をするタイミングで剪定し、穂木を作ります。剪定をしてから数時間の吸水ののち(剪定して樹液が漏れるようなら必要ない)、当日中に挿し木を行います。家庭菜園でこれから栽培してみようという場合は難しいこと承知のうえですが、剪定から数日が経過したものはここでは「良くない穂木」ということになります。

この場合、剪定は穂木の候補となる枝は剪定をせずにとっておき、その他の枝は3月中旬までに剪定を行うことになります。前述の通り、穂木は重要な「主幹」の一部を形成するため鮮度が大切です。

穂木の長さ

20cm以上、太さも2cm前後ものが良いです。理想を言えば、長さは25cm前後、太さは2cm以上3cm未満程度が良いでしょう。このくらいの穂木であれば、たくましい苗を作るのに、十分なエネルギーを保持していると言えます。短ければそれだけ穂木にエネルギーがなく、弱い挿し木苗となります。穂木が短すぎたえり、細すぎては途中で枯れてしまったり、芽が動かないこともあります。

穂木にする部位

剪定枝の中間部分が良く、芽が充実したものを選びましょう。穂先や基部付近は挿し木に使う芽としては良くありません。基部部分の芽は小さいことが多く、芽が充実していないことが多く、また、穂先部分の芽は、個人の見解ですが、いわゆる「秋芽」にあたり、「秋芽」から伸びる芽は発芽は早いものの成長が止まるのも早く、短枝となってしまう可能性が高いからです。要は「十分な枝が育たない」可能性があります。

節間は長すぎず、短すぎず

節間の長さはその枝が昨年健全に育ったのかを確認することができる指標となります。節間は5cm以上10cm未満で、極端に節間の長さが異ならない箇所を穂木とするのが理想です。ちなみに節間が短いと窒素不足だったり、線虫や乾燥などが原因で根に何らかのトラブルがあったなどが考えられます。節間が長いとその時期に徒長していたことがわかります。

木肌が綺麗であること

樹の枝に何らかの病気の症状がでている場合、木肌が汚れていることがあります。挿し木は病気のない健全な樹の枝で行うのが基本となるため、木肌が綺麗な剪定枝を使用しましょう。病気ではありませんが、たまにカイガラムシが付いていることもありますので、良く落とすか、他にも剪定枝があるなら他の剪定枝の使用を検討しましょう。

土は目の細かいものが良い

初期の発根において、土の芽が細かいと、細い根がたくさんでることになり、荒い目の土の場合、やや太めの根が1~2本でることが多いです。太い根は柔軟性がないため、取れやすく、根に損傷が生じると枯れる直接の原因となります。鹿沼土(細粒)を用土に混和するのがおすすめです。

多少の有機物や肥料はあっても大丈夫

すぐに発芽・発根するため、完熟であればバーク堆肥のような有機物が含まれていても大丈夫です。また、わずかな肥料分は発根後の初期成育を助けてくれます。本当の初期成育は穂木に蓄えられているエネルギーを使用しますが、葉が複数展葉後は光合成も始まっているため、根から吸収された養分の糖転化も始まっているものと筆者は考えています。

水はけは良い土で

これはいわずもがな。

穂木は垂直にまっすぐ挿す

穂木は重要な「主幹」となります。「主幹」は曲がっているよりまっすぐ垂直に立っているほうが健康的です。植物ホルモンの流れや維管束内の流れを円滑にするためにも、まっすぐに挿し木することのほうが健全と筆者は考えます。新潟県の試験場の報告書や参考書では少し斜め挿すことを推奨しているのですが、着眼点は同じような気がしています。

穂木が長いと複数の芽から発芽しますが、最終的には生育の良い芽を残します。頂芽優勢で始めは一番上の芽が伸びますが、切り口からの乾燥などが原因で、途中から2番目の芽の生育のほうが良くなることもあります。少し斜めに挿しのを推奨しているのは穂木の長さが短いこおとから芽が1つしかないことが多いです。複数の芽が候補となる場合、「下芽」を作らないように挿し木をするほうが理にかなっています。

最後に思うこと

メルカリやヤフオクでイチジクの穂木の販売をよくみかけますが、ひどいものが多いなぁって個人的には思います。販売を有利に進めたいがためだと思いますが、早い時期に剪定(11月とか12月)をして穂木を作って販売しているのだと思いますが、筆者的にはナンセンスです。また、発芽や発根したばかりの小さな苗の販売もみかけますが、あれもないかな、、、。新芽の基部が緑色のうちは、そして根が白いうちはデリケートなので丁寧に扱わないと取れたり、折れたり、もしくは樹そのものが弱って生育に影響がでてしまいます。

もちろん購入は自由だと思うものの、個人的には安易に飛びつかないほうが良いかと思います。少しでもこの記事がイチジクリテラシー向上のお役に立てれば幸いです。

 

今回は以上です。いつも画像の更新が遅くて申し訳ありません。「裸苗の保管方法」の記事については写真をアップしました。これから申告を作って、畑の植え付けが終わったら、動画も編集したいです・・・。対応がまったくできていなく、お待ちいただいているかたには本当に申し訳なく思います。

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