この記事ではいちじくの「モザイク病」について解説しています。この病気は「イチジクモザイクウィルス」というウィルスにより発症する病気で、「モザイク病」が発症した木の治療方法はありません。感染が進むと生育不良や早期落葉、果実の奇形などを招きます。さび病や疫病に比べるとそこまで多くはない病気になりますが、他の木にも伝染してしまう恐ろしい病気なため、この記事を読んでいちじくの「モザイク病」について確認することをおすすめします。品種証明を行える「苗木屋」から苗木を購入している場合、病気になっている苗木を販売しているとは考えづらいため、ある程度の安心はできます。しかし、個人はもちろんのこと、大手ホームセンターなどで扱っているものでも品種証明がだせない苗木も多く、「モザイク病」にかかっていることはあるため、知っていたほうが良い病気です。なお、プラスチックの札で品種名が書かれていても、それは名札であり、品種証明ではありませんのでご留意ください。
モザイク病とは
「イチジクモザイクウィルス」というウィルスにより発症する病気です。植物はウィルスに感染しても抗体を作ることができず、また「イチジクモザイク病」の治療薬はないため、感染した場合完治することはありません。
発芽・展葉期から盛夏にかけて葉に発病し、果実にも発症することがあります。また、樹全体だけでなく、同じ樹であっても枝ごとでみられることもあります。
症状
葉
モザイク症状がでたり、葉脈に沿った奇形や退緑、早期の落葉を引き起こします。葉に出るモザイク症状はさまざまで、下記画像を参照してください。




筆者の場合、ホームセンターで購入した苗木から、残念ながらモザイク病のものと思われる症状が葉に出てしまいました。実は購入当初から症状が出ていたのですが、購入時は珍しい品種ということで舞い上がってしまい落ち着きがなかったことと、急に雨が降り出してきたことで、よく確認をせずに購入してしまいました。家に帰ってよく見るとモザイク症状があったため、葉を切り落とし、隔離して育てて様子を見ていたのですが、上記画像の通り、やはり症状が出てしまいました。
枝
節間が短くつまったり、未着果の枝が見られることがあります。
果実
果実表面に斑紋を引き起こす場合があります。また、奇形となることもあります。葉の早期落果により果実の成長が止まったり、品質が低下したりします。
防除対策
どのような病気でも共通ですが、病気がでないように「予防」が最も大切です。
【予防対策】
- イチジクモンサビダニの徹底的な防除
農薬を使用して防除します。ただし、家庭菜園で農薬を使用するのは少しハードルが高いかもしれません。
イチジクモンサビダニに有効な農薬にはサンマイト水和剤、ピラニカ水和剤、ダニトロンフロアブルなどがありますが、農薬を使用する際は必ず、最新の登録のある農薬を確認してから行ってください。農薬については法律で規定があり、作物ごとに使用できる農薬が決まっています。昔は使えたけど今は使えない農薬もありますので、農薬を使用する際は使用方法も含めて正しく行ってください。
- 挿し木や接ぎ木として利用する場合には、症状のみられた枝を用いない
【「モザイク病」がでてしまったら】
「モザイク病」がでてしまった場合、感染した樹を抜き、焼却処分を行うなど、適切な処理を行います。
伝染経路
イチジクモンサビダニにより媒介されるほか、感染樹の接ぎ木、挿し木によって伝染します。接触伝染や土壌伝染はしないと考えられています。また、2021年時点において、イチジク種以外の感染は確認されていません。元々は国内では発見されていなかった病気でしたが、近年のいちじく人気に伴い、海外から輸入されたいちじくの穂木から国内に持ち込まれたものと推測します。ヤフーオークションやメルカリ、ネットショップからの購入や、葉のない棒苗を園芸店から購入する際は留意が必要です。複数のいちじくを畑に定植予定で慎重に対処したい場合は、8月末までは鉢で育てて一度様子を見るのが良いかと思います。信用のおけるお店や個人からの購入をおすすめします。
どんな病気も発症しないことが一番ですが、普段の観察のなかで、葉や果実などの変化を敏感に察知し、原因を確認して適切な処理を行うことが大切です。
今回は以上です。素敵ないちじくライフをお過ごしください♪
参考出典;
愛知県「いちじく病害図鑑」
農文協「イチジク作業便利帳」 真野隆司 編著