【いちじく】冬の防寒

こんにちは!「いちじくびより」です。今回はいちじく栽培の「最大の難所」ともいえる、「防寒」についてご紹介していきます。今回の記事を読むことで、「凍害」が起こる仕組みや「凍害」からイチジクの木を守る方法について知ることができます。大切に育てたイチジクの木を無事に越冬したい方、ぜひ最後までご覧ください♪

なぜ防寒が必要なのか?

イチジクは元々は亜熱帯性の植物で、多くの品種は寒さに弱いです。原産地はアラビア半島の南部とされ、冬の気温も10度を下回ることはありません。イチジクにとって日本の冬はかなり厳しい環境といえます。寒さに耐えきれず枯れてしまうこともあり、これを「凍害」といいます。

まずは凍害が起こる仕組みを理解しよう!

「凍害」は、イチジクの細胞内の水分が凍ることで膨張し、細胞壁を破ることで枯れてしまう被害を言います。ご自宅の冷凍庫で氷をつくると、出来上がった氷は体積が増えて膨張している現象をみたことはありませんか?それと同じことが植物の細胞内で起こり、細胞壁が壊れます。細胞壁が壊れた植物は枯れてしまいます。

「凍害」の主な要因は2つ!

「凍害」の主な要因は2つです。

  • 気温の低下

気温が低くなることで「凍害」が発生しやすくなります。なお、天気予報の気温は「地表面から1.5m」の高さで計測しており、地表面の気温はもっと下がりますので注意が必要です。最低気温が5度以下になると後述の「霜」が降りる可能性があり、危険な状態となります。

少し違和感があるかもしれませんが、「体感温度」は人間だけでなく植物にもあります。風が吹くと人間の体温が奪われるのと同じように、植物内の熱も奪われます。特に冬は強い風が吹き、気温よりも体感温度は下がりますので注意が必要です。防寒対策で最も気をつけたいのはこの「風」になります。

  • 霜(おまけ)

霜が直接被害を与えるわけではないのですが、霜が降りるほどの気温の低下が「凍害」を起こします。霜は太陽からため込んだ熱を地球が宇宙へ放出する現象(放射冷却)により、地表面の温度が急激に下がることで、地中の水分が凍る現象です。地中にある根や地表面付近の樹の幹、地面に背を向けた枝の背面側で温度が急激に下がり(冷気があたり)、「凍害」が発生します。この放射冷却現象を緩和することも大切です。

有効な「凍害」対策(6つ)

筆者が提案する防寒対策を下記に記載します。凍害対策①と⑤以外は組み合わせることで、より高い効果を期待できます。

  • 凍害対策①室内で保管(鉢栽培)

鉢で栽培している場合、最も簡単な方法だと思います。室内で保管する際は、乾燥と、日中と夜の気温差に気を付けて管理をしてください。日中は室内の気温が上がりやすく、生育が進んでしまうと耐寒性が弱くなり、夜間の冷え込みによって枯れてしまうことがあります。

  • 凍害対策②被膜(防風対策)

外の畑で育てているイチジク農家さんの場合、稲ワラやアルミ蒸着フィルムで被膜することで防風対策をしています。家庭菜園の場合、ワラの代用として不織布や、100円ショップで購入できる薄手のブルーシート、DAISOの防災グッズでアルミでできたエマージェンシーシートでも活用できます。筆者はまだ試したことがないのですが、エマージェンシーシートは防寒用の防災グッズなため、農業用のアルミ蒸着フィルムの代用として同じ効果が期待できます。

 

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  • 凍害対策③マルチング(霜対策)

放射冷却による急激な温度低下を防ぎます。地表面に新聞紙を丸めたものや段ボール、落ち葉、バーク堆肥やココチップなど、入手しやすものを敷き詰めます。空気の層が保温効果を高めます。地表面の上にあるマルチングが放射冷却を緩和してくれます。

イチジクの防寒
防寒例:ブルーシートで防風壁を作り、適度に落ち葉を敷いて保温している

ただし、敷きすぎると逆効果になるため、適量に留めます。昼間、太陽の熱で地中を温め、夜間は地中の熱を放出して地表面周りを温めますが、マルチングを行うとその効果を妨げる原因にもなります。そのため、イチジク農家さんでは敷きワラや落ち葉をすべて取り除きます。

 

  • 凍害対策④薬剤による添付(保温、霜対策、防風)

樹の地面側や樹の幹に塗る薬剤です。ゼオライトや炭酸カルシウムでできています。商品名でいうと「ホワイトンパウダー」や「霜ガード」などがあります。

  • 凍害対策⑤地面に埋める(苗木など)

特に苗木のように小さいものについて、地中に穴を掘り、横向きに埋めて土を被せる方法があります。掘り起こす際に芽や枝を傷つけないように、枝の周りを新聞紙で覆い。土をを被せる際に苗の周囲は砂や鹿沼土を被せ、その上を掘った土で被せていきます。土の中の温度は一定で、風の影響もありません。果樹苗生産者に発注をした場合、畑から掘り起こした根が裸の状態の苗木が12月に届くことがあります。そのようなときにイチジク農家さんがとる方法です。鉢で栽培している場合は、土がついたまま埋めます。菌が少ない砂や鹿沼土を被せることで、腐るのを防ぐことができます。

  • 凍害対策⑥その他(鉢栽培)

軒下に移動させたり、台座など、地面から離した場所に移動させることも有効な手段です。また、筆者は使ったことがありませんが、最近は耐寒性の優れた凍害対策用の陶器でできた鉢を使用するのも良いかもしれません。

【要注意】透明なビニールハウスは✖

よく園芸店で売っている小型のミニハウスの使用は注意が必要です。日中は被膜内の温度がかなり上昇して生育が進んで耐寒性が下がるため、夜間の冷え込みによってかえって「凍害」の危険性が増します。使用する場合は熱がこもらないよう、日中は換気をしっかりすることが大切です。換気ができない場合は使用を避けたほうが良いでしょう。

防寒対策は4月まで

防寒の対策は4月上旬から中旬頃まで行います。稲ワラなどで被膜している場合は、外すのもこの時期です。ただし、最近の気候変動は読めず、4月後半でも急激に気温が低下する日があります。その際は臨機応変に防寒の対策を行います。

 

以上、今回は「冬の防寒対策について」でした。次回は「凍害」の被害にあってしまった時の対応について投稿予定です。そちらもぜひご確認くださいね♪「いちじくびより」でした!

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