【コラム】「リジェネラティブ農業」とイチジク

今回はイチジク畑にて実現する「リジェネラティブ農業」について考察していきたいと思います。これからの時代、工業的な慣行栽培は時代の流れにそぐわないと考えています。イチジクの経済栽培について“新しいスタンダード”を作ることが筆者のひとつの夢でもあります。そのために日々精進しています。

そもそも「リジェネラティブ農業」ってなに?

ビジネスにおける「リジェネラティブ」とは、環境をより良い状態に再生しようという考え方です。「リジェネラティブ農業」は、環境の負荷を抑えながら、環境を再生させる農業です。「環境再生型農業」とも言います。

例えば、現在、異常な気候変動が世界中で問題になっていますが、農業において土壌中の有機物を増やす取り組みを行うことで、土壌が多くの炭素を吸収することが可能になり、気候変動の抑制に貢献する、というものです。

「環境の負荷を抑える」取り組みと「土壌の有機物を増やす」取り組みを行う農業が、「リジェネラティブ農業」と捉えています。

「サステナブル型農業」との違い

「サステナブル型農業」というのは「持続可能な農業」のことで、「現状を維持できるように環境負荷を抑えて農業に取り組みをしましょう」というものです。端的に言えば、「現状維持を目指す農業です」

環境への負荷を抑える点で同じですが、「リジェネラティブ農業」は根本的な課題(環境問題)の解決にアプローチしている点で異なります。

「リジェネラティブ農業」の具体的な取り組み

「リジェネラティブ・オーガニック認証制度」というものがあり、こちらを参考に下記のような取り組みがあります。

  • 化学農薬の不使用
  • 化学窒素肥料の不使用
  • 不耕起栽培(トラクターなどで耕さない)
  • 25%以上を植物で被覆する
  • 輪作、もしくは、多年生植物を植える

こうしてみると、化学農薬や化学肥料の課題をクリアすることでイチジク栽培は環境に配慮した農業(リジェネラティブ農業)に取り組みやすい作物だと思います。

イチジクは平均的な慣行栽培の農薬使用回数は25回程度で、他の作物よりも圧倒的に少ない回数です(例えばいちごは、栃木県の「とちおとめ」で65回、他県や品種が異なると70回を超える場合もある)。

果樹のため、不耕起栽培となり、肥料も有機肥料のように遅効性肥料でも十分で、環境負荷を軽減した農業に取り組みやすいだろうと考え、就農の際に筆者はイチジクを選択しました。

また、賛否両論あるかと思いますが、上記に加えてイチジク特有の管理も見直すことができないか検討しています。

  • 誘引をしない

誘引をしないことで、誘引作業にかかる“ビニールの紐”や“青竹”、イチジク棚で使用する“鉄パイプ”などの資材ゴミを減らすことができます。また、風の影響を受けにくくするには結果枝の長さを短くする必要があるため、施肥量を減らすことにもつながります。

※ 桝井ドーフィンでは結果枝が柔らかいので不可

  • 除草の見直し

“草生栽培”を取り入れたり、防草シートではなく“もみ殻”を活用することでも資材ゴミを減らすことができます。

  • 防風設備を使わない

ネットやパイプなどの資材ゴミがでなくなります。

これは筆者のイチジク栽培の管理において根底となる考え方です。現在の慣行栽培は、防風設備ありきの農薬使用回数や圃場設計(株間、列幅、畝幅、畝の高さ、畝の向き)、施肥設計、その他結果枝の長さや段数、結果枝の間隔、灌水 等、現在の栽培管理が出来上がっていると考えています。

そのため、農薬を減らし、有機を中心に栽培するためには防風設備を取り除き、慣行栽培で良しとしてきた栽培管理について見直しを行って、試行錯誤しながらイチジクの栽培に取り組んでいます(全部否定しているわけではありません。必要なことや不必要な事を見極めるように努力しています)。

イチジク栽培の“新しいスタンダード”を作ること。それが筆者のひとつの目標でもあるからです。

「リジェネラティブ農業」のメリット

生産者にとっては化学肥料にかけるコスト削減、耕作の省力化、付加価値への転化、消費者にとっては安心して商品が買えるといったメリットがあるのではないでしょうか。

最後に

今回は以上です。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

ブログのほかに、InstagramYouTubeもやっています。YouTubeはこれから本格的に始めていきたいとは思ってはいるのですが、なかなか手が付けられていません。

それでも応援、ご期待いただけましたらとても嬉しく、励みになります。フォローチャンネル登録のほど、宜しくお願いいたします。

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